振り回されるのはいつも私


「えーと、次はやっぱかわいい系のがいいかなあ。アリスちゃんとかー」

手にしたカードをぱらぱらとめくりながら、ひとりごと。
自分も強くなった分、相手にする敵の方も大分強くなってきている。
そんなわけで今日は新しいペルソナを作るつもりでタルタロス帰り、通い慣れたベルベッドルームへと足を運んだのだった。

「流依さま、ちょっと失礼」
テオの白い手袋がそっと自分の方へと伸ばされる。

「なあに?」
つられるように手元からテオへと視線を上げた。

「お顔にお怪我をされてますよ」
そっと頬に触れた彼の指先。

「あー、たいしたことないよ。さっきの戦闘でちょっとドジっちゃっただけ」

テオの触れたところよりも少し上に走る、一筋の赤い線。
かわせると思ってたのに、うまく敵の攻撃を避けられなかったのだ。
それはほんのかすり傷で、血もすでに止まっている。
だから、流依はそんなことは全く気になどしていなかった。

「手当を…」
「だいじょぶ。舐めときゃ治るよ、こんなの。怪我のうちに入んないって」
心配そうな表情の彼に、明るく笑ってそう言った。

ぺろ。

傷へと触れたあたたかな感触。
それは一瞬のこと。
止まった思考。
何をされたかわかった瞬間、顔が真っ赤に染まる。

「ちょ、ちょ…っと、テオっ!な…にするのっ!?」

「舐めときゃ治る、と流依さまがそう仰いましたので」

きっと、他意などないのだろう。
きれいな笑顔でにこりと微笑まれる。

「…普通、そゆことする?」
小さく口の中で呟く。

怒れない。
言ったのは自分だ。
怒れない。
ただテオはそれを真に受けただけだ。
怒れない。怒っちゃダメだ。

「…何か、仰いましたか?」

「なんでもないっ!」
流依は赤い顔のまま、そう叫んだ。


--- 振り回されるのは、いつも私。


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