月夜
眠れない。
眠れない。
眠れない。
教室の中、仲間たちは皆それぞれ安らかな眠りについている。
昼間の戦闘で疲れたのだろう。
早く体を休めなければいけないことは分かっている。
けれど、やっぱり眠れない。
辺りは静寂に包まれている。
白いカーテンの隙間から覗く月の光。
それに誘われるように、屋上へと上がった。
今日は満月か。
煌々と周囲を照らす夜の女神。
まるで自分を見てくれというような自己愛なその光。
「南条、眠れないの?」
聞き慣れたその声。心地よいテノール。
いつの間に来たのだろう。
先程は教室で仲間たちと同様に寝息を立てていたはずだ。
起こさないよう、静かに出たつもりだったが。
「起こしたか?」
「いいや、起きてた」
「そうか」
短い会話が続く。
「お望みなら、眠らせてあげようか?」
足音も立てず器用に、目の前まで彼が歩を進める。
「子守唄でも歌ってくれるというのか?」
皮肉っぽく、そう告げる。
「君次第だね」
くすりと彼は悪戯っぽく笑う。
そしてその白い指先は南条の掛けている眼鏡のフレームへと伸ばされ、優しく奪われる。
「これじゃ何も見えない」
苦情を漏らすと彼が嗤った。
「南条、目が悪いもんね。どこまで近づけば見えるのかな?」
その腕が伸ばされ、南条の背中へと回される。
「まだ見えない」
口元に笑みが刻まれる。それは確信犯の笑み。
「そう」
彼がそっと瞳を閉じる。
重なる唇。
二人の影は今ひとつに---。
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