私だけでいい


部活の帰り。
テニス部の仲良しメンバーでワックに寄り道。
テーブルをふたつくっつけて、ガールズトークに花を咲かす。

「ねえ、流依。真田先輩の好きなとこってどこ?」

部活の子には、真田先輩と流依が付き合ってることがばれている。
こわーい親衛隊とかいるので「黙っててね」と釘は一応刺してあるが。
女の子が集まれば恋愛話になるのも無理はない。

「かわいいところ」

質問に、思ったまま素直に答えた。

「ちょ、流依。かわいいとこって何よそれ」
「カッコイイとかってゆーならわかるけどさあ」
「意味わかんないよー」
口々に上がる抗議。
なんでみんながそう言うのかわからない。

「かわいいよ、真田先輩」
そう言って、オレンジジュースを一口啜る。

「だってさー、無敗のボクシング部の主将だよ?」
「そうよ、カッコイイじゃん。その辺の軟弱な男子とは大違い」

「かわいいって」
そう言って、ポテトをひとつ口に放り込む。

説明なんてしてあげないけど。
胸のうちでそう思う。

「ダメね、この子。わけわかんない」
「んじゃ、理緒はー?」
「そうだ。理緒は友近のどこが好きなのよ?」
「えーと」
顔を真っ赤に染めた理緒。
話題が彼女に移ってちょっとほっとした。

だって、みんなにかわいいって知られちゃったら、またライバルが増えるかもしれないじゃない。
ただでさえ、親衛隊がいたりするのに。
真田先輩と一緒にいるために、努力したわ。
寮が同じだから話しかけてもらえる機会は他の子より多かったと思う。
でも、校内で話すのはちょっと気が引けた。突き刺さる視線が痛かった。

先輩がかわいいって知ってるのは、私だけでいいの。

携帯が鳴る。
着信音で誰だかわかった。
周りの子達も誰からの電話か気づいたみたい。

「各務、今大丈夫か?」
「はい」
「なんだかずいぶん騒がしいな」
「部活の子とワックに来てて。…もう出るから大丈夫です」
そう答えながら、立ち上がる。
「あ、片付けとくよ」
手にしたトレイをさっと奪われる。
「流依、ばいばい。先輩によろしく〜」
「また明日」
ひらひらと手が振られる。
みんなの満面の笑顔がちょっとこわい。
明日はきっと冷やかされるんだろうなと思った。


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